国際核融合炉材料照射施設(IFMIF)における液体リチウム表面流に関する研究(システム量子工学領域)
国際核融合炉材料照射施設(International Fusion Material Irradiation Facility, IFMIF)は核融合炉での使用に適した材料を試験するための施設として建設が計画されています。IFMIFでは、2本の重陽子ビーム(40MeV, 125mA)を液体金属リチウム(Li)自由表面流に照射することにより14MeVの核融合中性子を生成させます。液体Li 噴流は、高真空中を高速で流れ、高熱流束のビーム照射で生じる熱を除去しつつ、安定した中性子場を長時間にわたり生成するという非常に重要な役割を担います。そのため、中性子束分布の空間的および時間的な変動の予測やターゲット自身の保全確保のため、内部発熱を伴う液体Li壁面噴流の熱流動特性(自由表面上での波の生成と成長、厚さ分布変化)の把握は不可欠です。
システム量子工学領域では、大阪大学液体金属Li循環装置を用いて、液体Li自由表面流の計測を実施しました。液面計測には独自に開発した電気接触式液面計(プローブ)、高速度ビデオカメラ(HSV)が用いられました。図は、HSVで撮影した流速5m/sの場合のLi液面の様子を示しており、ノズルから吐出された液体Li流は、下流に向かって波を発達させながら進展していることが分かります。プローブ計測から、Li流の平均波高は下流に向かうにつれて気液せん断層の影響により直線的に増加することが分かりました。また、最大波高は流速の増加に伴い増加し、高流速においては2.5 mm以上に達する結果を得ましたが、IFMIF実機においては遠心力による表面波振幅の抑制効果が期待されるため、設計目標値である表面波振幅1 mmに収まると考えられます。これらの成果は、IFMIFのLiターゲット設計に大きく貢献できるものです。