日下 祐江 助教
教員紹介
氏名 日下 祐江
職名 助教
学位 博士(工学)/獣医師
専門 放射線工学・医療応用工学・脳腫瘍治療
領域 量子エネルギー工学講座 量子線生体材料工学領域
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脳腫瘍を「狙って壊す」治療の実現を目指して

脳腫瘍は、正常な脳組織に囲まれているため、がんだけを選択的に治療することが非常に難しい疾患です。この課題に対して、がん細胞の中だけで作用する放射線治療(BNCT)の研究を行っています。BNCTは、がんに集まりやすいホウ素という物質を使い、そこに中性子を照射することで、がん細胞の内部だけで強い反応を起こす治療法です。脳の機能をできるだけ守りながら治療できる可能性があり、脳腫瘍に対する新しい選択肢として期待されています。
脳腫瘍に薬を届けるという課題

脳腫瘍治療の大きな課題の一つは、薬が脳に届きにくいことです。脳には血液から異物が入りにくい仕組み(血液脳関門)があり、多くの薬は十分な量を腫瘍に届けることができません。そこで、血液を介さず、脳の中を流れる脳脊髄液(CSF)を使って、脳腫瘍に直接薬(ホウ素薬剤:BPA)を届ける方法を研究しています。この方法により、
- 少ない量で効かせる
- 腫瘍により選択的に届ける
- 全身への副作用を抑える
といった可能性が見えてきています。
治療を「見える化」し、より良くする

脳腫瘍の治療効果を高めるためには、薬がどこにどれだけ届いているかを正しく知ることが重要です。そのため、腫瘍内における薬剤の広がりや正常脳との分布の違いを明らかにし、治療効果のばらつきの要因解明に取り組んでいます。「経験」に頼るのではなく、仕組みに基づいて治療を設計することを目指しています。
医療と工学をつなぐアプローチ
獣医師としての生体理解と、工学的な解析・設計を組み合わせ、放射線・薬剤・生体反応を統合的にとらえる研究を進めています。将来的には、
- 脳の機能を守るがん治療
- 患者ごとに最適化された治療
- これまで治療が難しかった脳腫瘍への新しいアプローチ
の実現を目指しています。
論文・著書リスト
- Kusaka S., Voulgaris N., Onishi K., Ueda J., Saito S., Tamaki S., Murata I., Takata T., Suzuki M., “Therapeutic Effect of Boron Neutron Capture Therapy on Boronophenylalanine Administration via Cerebrospinal Fluid Circulation in Glioma Rat Models,” Cells, 13, 19, 1610 (2024).
- Kusaka S., Miyake Y., Tokumaru Y., Morizane Y., Tamaki S., Akiyama Y., Sato F., Murata I., “Boron Delivery to Brain Cells via Cerebrospinal Fluid (CSF) Circulation in BNCT of Brain-Tumor-Model Rats-Ex Vivo Imaging of BPA Using MALDI Mass Spectrometry Imaging,” Life, 12, 11 (2022).
- Kusaka S., Morizane Y., Tokumaru Y., Tamaki S., Maemunah I.R., Akiyama Y., Sato F., Murata I., “Boron Delivery to Brain Cells via Cerebrospinal Fluid (CSF) Circulation for BNCT in a Rat Melanoma Model,” Biology, 11, 3, 397 (2022).
- Kusaka S., Morizane Y., Tokumaru Y., Tamaki S., Maemunah I.R., Akiyama Y., Sato F., Murata I., “Cerebrospinal fluid-based boron delivery system may help increase the uptake boron for boron neutron capture therapy in veterinary medicine: A preliminary study with normal rat brain cells,” Research in Veterinary Science, 148 (2022).
学生へのメッセージ
脳腫瘍という難しい課題に対して、工学・医学・生物など、さまざまな分野の知識を組み合わせて挑む研究です。一つの専門にとどまらず、異なる分野をつなぐことで新しい解決策を生み出す面白さがあります。
自分のアイデアで医療に貢献したい方、新しいことに挑戦したい方の参加を歓迎します。
趣味・その他
電車旅、ひれ酒、猫の観察、ナンプレ、温泉
