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2024年4月11日
受賞・報道・出版

関西電気化学研究会で奨励賞を受賞(エネルギー材料学領域 宇都宮友彦(博士前期課程1年))

2023年12月9日に神戸大学六甲台第2キャンパスで開催された関西電気化学研究会において、エネルギー材料学領域(山田研究室)博士前期課程1年の宇都宮友彦さんが、「奨励賞(ポスター発表)」を受賞しました。

宇都宮さんの発表タイトルは、「層状マンガン酸化物層間の水分子構造制御による酸素発生反応活性の向上」です。

研究の概要

次世代のエネルギーキャリアとして注目されている水素ですが、その多くが化石資源をベースに製造されています。持続可能な社会の構築のため、再生可能エネルギーの余剰電力を利用して水を電気分解することで得られる「グリーン水素」の割合を増やしていく必要があります。水の電気分解反応は水素発生反応と酸素発生反応の2つの反応から成り立っており、この内、エネルギー効率が低いのは酸素発生反応となっています。そこで反応効率を高めるために、触媒材料の研究が進められてきました。触媒の役割は、その表面上で反応進行中に生じる反応中間体の安定性を制御し、反応に必要なエネルギー(過電圧)を下げることです。これまで、中間体の安定性(反応中間体と触媒間の吸着エネルギー)の最適化を図ることで高活性な触媒開発を目指してきましたが、その性能向上は頭打ちになりつつあります。

その一方、反応中間体を取り巻く環境(水分子ネットワーク構造)が反応効率を微小に変化させることが報告されています。この構造は電解液に含まれる陽イオンの水分子との相性によって決定されます。しかし、水分子に対するイオンの存在比は極めて小さく、このイオン効果(水分子ネットワーク構造の変調)はわずかであり、大幅な反応効率化へとは繋がっていないのが現状です。そこで、私はイオン効果の増幅を目指して層状マンガン酸化物のナノサイズ層間に着目し、この層間内に反応活性点と水分子、そして陽イオンを共存させることで、水分子に対するイオンの存在比を激的に増大させた特異な環境を構築しました。その結果、カチオン効果が増幅され、反応効率を大幅に向上することに成功しました。本研究により、触媒材料最適化以外の「反応環境の構築」という新たな設計指針の可能性が見出され、さらなる「グリーン水素」製造効率の向上が期待されます。

受賞者のコメント

このような賞を頂き、大変光栄に感じています。引き続き魅力的なサイエンスを構築出来るように研究に勤しんでいきます。


研究会に参加した山田研メンバー(宇都宮:左から4番目)